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VULCAIN

S 2326 B Cricket


 

<バルカン社のクリケット。機械式アラーム時計の代表ともいえるこのクリケット。一時は
レビュー・トーメン社から発売されていました。>

VULCAIN社製の機械式アラーム時計、クリケットです。

クリケットはバルカン社を代表する時計で、1942年からバルカン社の技術責任者のロベルト・ディティシャイムの手により、実に5年の年月を費やされ1947年に誕生しました。

デジタル・クォーツ時計主流の現在ではさほど珍しいものではないアラームも、1947年当時腕時計に搭載されたアラームというものは世間の話題をさらうに十分センセーショナルなものだったと想像できます。

1940〜60年代までの初期型のクリケットは通常のラウンドケースにオーソドックスな文字盤の組み合わせでしたが、60年代後半から70年代にかけては当時の流行もあるのでしょうが、様々な形のケース・文字盤の組み合わせにアラーム・ムーブを組み込んだ、非常に興味深い時計となっています。

<今回入手したクリケットはNOS並みのとても良いコンディション。フロント部の放射状の
ヘアー仕上げ、サイドのエッジもしっかりと出ています。>

<7時と8時の間にあるポインター針がアラーム針です。最後まで巻き上げた状態でおよそ
20秒間アラームが鳴り響きます。非常に大音量です。(笑)>
私が入手したクリケットはケースや文字盤のデザインから70年代の物と推測できます。

ブラウンの文字盤は、中心から外側に向かって放射状にダークになるグラディエーションが非常に美しいです。

その美しい文字盤を更に引き立てているのが、白色にペイントされたバーインデックスとバーハンド。センターセコンドとアラーム針は文字盤と同様のメタリックブラウンです。

ケース形状は当時流行したクッション型のもので、サイドは鏡面仕上げ、フロント部は放射状のヘアー仕上げとなっています。

時計を正面から見ると、まず目に付くのが2時位置にあるプッシャー。これは一件ワンプッシュクロノのプッシャーのようにも見えますが、これを押し込むことにより3時位置にあるリューズが自動的に押し出され、これによりアラーム針を操作することが出来ます。時刻合わせは通常通り、リューズを引き出すことにより行えます。 

この時計にはハック機能は無く、また時分針は進めることは出来ますが、戻すことは出来ません。

<リューズ上部に見えるのがアラーム・セッティング用プッシャーです。これを押し込む事に
より、リューズが自動的に押し出されアラーム・ポインターを動かすことが出来ます。>

<縦、横がほぼ同じ長さの真四角に近い形状のケース。最近各社から70年代の復刻版が
発売されていますが、それらに劣ることの無い質感です。>

このリューズにはもう一つ独特な機能があります。通常の時計は12時位置にリューズを巻き上げることにより時計本体のぜんまいを巻くことが出来ますが、このクリケットは12時位置にリューズを巻くことによりアラーム用のゼンマイを巻き上げることが出来、通常とは反対の6時位置にリューズを巻くことによって、時計本体のゼンマイを巻きあげることが出来ます。

入手直後、早速通常通り12時位置にリューズを巻き上げ6時位置に戻すという操作をした私は、リューズが通常の物よりも非常に戻し難い事が気になりつつも最後まで巻き上げました。

しかし2時間ほどすると時計が止まってしまいました。不思議に思いつつも、更にリューズを巻き上げましたが案の定ゼンマイのリザーブは十分。そこで私はてっきり時計が壊れていると思ってしまいました。(笑)

<裏蓋には1858年に創立されたことを示す刻印。スイス、アメリカでの特許ナンバーが
それぞれ刻印されています。裏蓋にある"孔”はアラーム共鳴用の物。>

<上部、裏蓋内側に見える突起がアラームハンマーの響きを裏蓋に共鳴させ更に大音量
になるような工夫がされています。>
その夜、いつも参考にさせて頂いているなかひろさんのHP”なかひろ時計館”コレクションに、これまた70年代テイスト溢れるデザインのクリケットを発見。

そこではじめて、クリケットのリュ−ズには巻き上げる方向が12時と6時の2方向あることをはじめて学び、決して時計が壊れていたわけではない事に気付いた次第です。(汗)

裏蓋をあけると、そこにはクリケットの心臓部である非常に美しいムーブメントが顔を覗かせます。3針モデルながら、ムーブメントの造詣のその美しさはクロノグラフ・ムーブメントに迫るほどです。

<二つの香箱が非常に美しいムーブメント。ムーブメントはロジウムメッキに
コート・ド・ジュネーブ仕上げの施された非常に美しい仕上げとなっています。
右下方に見えるパーツがアラームハンマー。>

〜VULCAIN Cricket〜
ref.S 2326 B 1970年代 手巻き バルカン自社製ムーブメント 17石 5振動
ケース・40mm ラグ幅・20mm 黒革バンド

まず一番最初に目に付くのが先にも述べた2つの香箱。大き目の方が時計本体のゼンマイを収めた物、そして小さめのものがアラーム用ゼンマイを収めたものとなっています。

大きめの香箱にはバルカン社が1929年にスペインのバルセロナで行われた万博の際に獲得した”GRAND PRIX”の刻印があります。さらにこのクリケットの特許をUSAに登録した際のナンバー”US.PAT.2844294”の刻印も刻まれています。

非常に美しいムーブメント、そして今も色焦ることの無いデザイン。光によっていろいろな表情を見せる栗色の文字盤。大きめのクッション型のケースと相成って、まるで最近発表されたばかりの時計のような新鮮さのある時計です。

 

 

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